読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書の旅

私にとって「読書」とは何かを考えます。

代表的日本人

f:id:tsubame43:20160903160518j:plain


2018年の大河ドラマ堤真一さんが「西郷隆盛」を演じると聞き、ある本を思い出した。


内村鑑三著 鈴木範久訳『代表的日本人』

(元来語り出すと文章が長くなる性質なので、項目を立てて紹介していこう)


・【英文での出版】
内村は日本人であるのに、訳者がいることに首を傾げる方もいらっしゃるのではないだろうか。
実はこの本は、英文で原書が発刊された。
1894年に「Japan and the Japanese」が出版され、1908年に「Representative Men of Japan」で改版がなされる。


・【西郷隆盛と『代表的日本人』】
この本は内村鑑三が、代表的な日本人五人を本の中で描き出した。
その五人のうち最初に書かれているのが西郷隆盛である。
西郷以外に内村によって描かれたのは、上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮上人だ。


・【100分de名著×若松英輔
『代表的日本人』は、NHKで放送中の100deで名著で1月に紹介された本でもある。
若松英輔氏のテキストを参照しながら、この本を紹介したい。
テキストを読むことで、こういった読み方ができるのか!と私のような想像力に乏しい人間には目から鱗であった。
ぜひ一緒に読むことをおすすめしたい。(※決して回し者ではない)


・【二つの戦争】
若松氏は、テキストのなかで、この本の発刊した時期に注目している。
日清戦争日露戦争。二つの戦争を経験しナショナリズムが高揚する中、英文で出版されたという背景を抜きにして、この本と向き合うことはできない。


・【鍵を握る言葉―天】
この本の文章の主格は、人間を超えた力の主体である天=hevenである。
西郷が主格でなく、あくまでも天が主格。
若松氏によれば、人間が何かをするのではなく、人間は無私になって天の道具になるのがもっとも美しいという内村の世界観が表れた構造なのだとか。


・【待つ】
この本の中で、私が最も印象に残った西郷に関する一文を紹介したい。
「西郷は人の平穏な暮らしを、決してかき乱そうとはしませんでした。ひとの家を訪問することはよくありましたが、中の方へ声をかけようとはせず、その入り口に立ったままで、だれが偶然出て来て、自分を見つけてくれるまで待っているのでした!」  (内村、39ページ)
内村はこの文に傍点を文末には感嘆符をつけることで、一文をことさら強調している。内村の描く西郷像の象徴ともいえる一文だ。
私にとっては、まったく新しい西郷像であった。
若松氏は、必ずしも内村のように西郷を読む必要はないとテキストで述べているように、これはあくまでも内村の考える西郷に過ぎないが、私には驚きであった。
この一文を読むと、スピードが求められる現代において、「待つ」ことの重要性を感じるとともに、
「待つ」ことは大変忍耐のいる行為であるが、「待つ」ことのできる人間になりたいと感じる。


・【良書と読者】
若松氏は、テキストの中でこんな素敵な言葉を述べておられる。
「良書は、読まれることによっていっそう豊かになっていきます。それは読者とともに育ち、読者によって完成されるものです。」
こうも述べている。
「五人すべてに感心持てなくてもよいのです。」
私自身、まだ西郷隆盛しか読んでいない。
いつか年を重ねて読みたくなったら、他の四人も読みたいと思っている。



はる