読書の旅

私にとって「読書」とは何かを考えます。

篠田桃紅という人

今気になっている本、篠田桃紅の最後の著書「これでおしまい」

 

107歳まで生きた美術家の言葉。

 

◆最初のページの言葉↓

人は結局孤独。一人。

人にわかってもらおうなんて甘えん坊はダメ。

誰もわかりっこない。

 

NHKインタビューにて↓

母というものにもならないし

妻というものにもならないし

なんかそういう生き方を避けたというところが私ですよ

それが私ですよ

だから私が作るものも非常に非現実なんですよ

非常に儚いものかも

ふわーんと浮いているようなこの世に浮遊物みたいなものかも

(102歳の言葉)

 

自由の代償が孤独なんだろうか。そこは私もわからない。

桃紅は、独身であることを選んだのではなく、母や妻になることを「避けた」と表現した。

桃紅の親世代は江戸時代の封建的な思想を持っていたであろう。だからこそ、避けたと表現したのかもしれない。

言葉の真意は桃紅にしか分からない。

結婚は当たり前とされていた風潮の中で、独り選んだ道。

単身ニューヨークに渡り、書の枠に留まらない墨象を確立した彼女。

 

美の巨人たちでは彼女をこんなキャッチコピーで紹介。

「生きた、描いた、貫いた」

 

◆老いることは枯れることではありません。老いることは熟すことです。

 

彼女の生き様を垣間見るためにも読んでみたい一冊。

 

追記;彼女の作品の展示には解説やタイトルがないらしい。

見る人がこの作品をどう見るかということが答えと桃紅。

これって一大ブームになった「13歳からのアート思考」では?

 

セブンルール、金井弓子さん

7つのルールで話題の女性を映し出すドキュメントバラエティー、セブンルール

 

この番組が大好きで毎週録画して欠かさず見ている。

知らない業界で活躍する女性たちはどなたも眩しく映るものだ。

 

ダイヤモンド社で編集者として働く金井弓子さん

ゆるーい動物図鑑として子どもたちに大人気な「わけあって絶滅しました。」シリーズの仕掛け人

さらには、「東大教授がおしえるやばい日本史」シリーズも手掛けた彼女。

 

編集者というと裏方に徹し、表に出てこないイメージがあるが、そんなイメージを変えてくれた人。

 

彼女のセブンルール

1本の企画はタイトルから決める
2怒られても粘る
3面白い本は見出しを全部書き出す
4休日は夫とポケモンカードで遊ぶ
5金太郎飴みたいな本を作る
6本の表紙は書店で決める
7小学4年生のままでいる

 

面白い本は見出しを全部書き出すというのは、論文を書くときの先行研究の洗い出しにもよい方法かもしれない、と

彼女のセブンルールからヒントを得た。

 

 

セブンルール、新井見枝香さん。

セブンルール。

 

「新井賞」設立、出版業界の風雲児、

書店員、新井見枝香7つのルール。

 

①ポップに感想は書かない。
芥川賞直木賞と同時に新井賞を発表する。
③毎日本を買って帰る。
④残高は気にしない。
⑤本は雪崩が起きたら捨てる。
⑥会社に縛られない。
⑦売り場仕事をやり続ける。

 

作家さんからも信頼の厚い新井さん。

作家さんとのナイトトークショーなど、彼女が仕掛けた本は売れると評判。 

 

三省堂書店有楽町店のバイトから、正社員になり、営業本部へ栄転。しかし、彼女は本店の売り場に戻ることを願っていた。一年間上司にそれをアピールし続け、最後には現場復帰。

 

厳しい出版業界。出版不況。

 

飾らない真っ直ぐな姿勢、売り場を愛する姿。そして、本当に本が大好きな人なんだなあと思いました。大好きな本を1人でも多くの人の手にとって貰えるようにお仕事をされているんだなあ。

 

仕事に対する姿勢、見習いたいです。

私のセブンルール考えてみようかなあ。

 

 

はる

 

ナツイチのキャッチコピー

もう夏も終わるけれど、すてきだな、と思ったので記事にします。

 

以下、集英社の展開するナツイチのキャッチコピー。

 

ひとはときどき、繋がりすぎる、と思う。

誰かと一緒もいいけれど、ひとりを楽しむぜいたくだってある。

たとえばこの夏、ふらりと読書涼み。

思い切り楽しもう。最初の1ページから、最後の1ページまで。

 

 

たしかになあ、SNSで絶えず繋がり続ける世の中。

本の世界に没頭してひとりを楽しむぜいたくもいいなと思わせるキャッチコピーでした。

 

 

はる

にじいろガーデン(小川糸)

小川糸さんの小説は読みやすくて好きだ。

 

話のテンポがはやくて、読み進めやすい。流れるように言葉が紡がれていくなかで、大切なことは、心のそばにそっと置いていく感じがするから好きだ。「そっと置く」という表現が相応しいと、私は思う。決して押しつけがましいことはないから、小川さんの小説は心地よい。

 

***この記事は、ネタバレも含みます****

 

にじいろガーデンは、プロローグと四章からなり、4人の主な登場人物の視点によって構成されている。第一章は泉、第二章は千代子、第三章は草介、第四章は宝の視点だ。

 

物語は、泉が女子高生の千代子の飛び込み自殺を止めたことからはじまる。やがて二人は駆け落ちをし、家族となる。母二人、子二人。泉と千代子はレズビアンのカップルで、草介はそれぞれ泉と前夫の子であり、宝は千代子が駆け落ち前にやけくそになって宿してしまった子である。駆け落ちした二人は、マチュピチュ村でゲストハウス虹を経営しながら、家族として暮らしていくのだがー・・・

 

最後には、血のつながっていない二人が残される。

 

家族とは何だろう。血のつながりなんか関係ないんじゃないか、そんなことを小川さんは問題提起したかったのかもしれない。それくらい用意周到に物語は仕掛けられていた。男女の結婚は祝福されるのに、女性同士は祝福されない、お互いに好きなのに二人の子は持てない。人を想う気持ちは同じなのに、フェアじゃない世の中を懸命に生きる泉と千代子の姿に心打たれる。気づくと、涙が出ているシーンがたくさんあった。

 

 

レインボーフラッグやにじいろ・・・

宝が「ふたりは、また生まれ変わっても、レズビアンがいいの?」ときいた。

泉の答えの中で、「少なくとも私やおチョコちゃんに与えられた使命って考えると、それはね、たぶん、いたわることだと思うの。うちらは、世の中のはじっこで生きているから、そういう少数派の人たちの気持ちが理解できる。だからその分、優しくなれるの。いろんな弱い立場の人の気持ちが、わかるから。」(p293)

 

「そうね。あと、世の中にいろどりを与える存在ってことも、言えるかも。」と千代子が加える。「世界がすべて同じ一色の色だったら、つまらないじゃない。でも。どんなに数が少なくても、ちょっとそこに色彩があるだけで、世界がグッときれいに見えるでしょう?それと一緒よ。」

 

役割というと重いし、ちょっと違うかもしれないけれど、人はみな自分の運命を懸命に生きていて、その中で答えを出そうとする生き物なんだなあと思う。レズビアンとして生きる二人が自分の生まれた役割を見つけようとすると疲れてしまうけれど、二人が自分らしくありのままで生きることで、ようやく「いたわること」「いろどり」という答えを見つけたのだと思った。世間的にみて「普通」じゃない世界を生きることは、どこか肩身が狭くて自分は劣っている人間だと思ってしまうけれど、「いろどり」を添える存在だと思えたら、少しは肩の荷が軽くなるのかもしれない。「ありのまま」生きることって難しいんだなあ。

 

 

いろんな人がいる。自分の狭い視野や世間の「普通」の物差しで判断してしまいそうになる。でも、正解なんてわからないし、「そのままのきみでいいんだよ。」といえる存在でありたい。

 

 

 

はる

 

 

愛さなくてはいけないふたつのこと(松浦弥太郎)

二年前、仕事がうまくいかなくて悩んでいるとき、図書館で出会ったのが松浦弥太郎さんの本であった。「考え方のコツ」をはじめ、「今日もていねいに。」など松浦さんの著書は何冊か拝読している。

 

さて、今日ブログに書くのは「愛さなくてはいけないふたつのこと」である。正式にはあなたに贈る人生のくすり箱という言葉が、タイトルの前につく。

 

8月末、とある駅ビルの本屋さんで、ふと手にとったのが、今日の本だ。乗る電車の時刻を調整するために立ち寄った本屋で、別の本を探そうと端末を操作していたら、目にとまった。ぱらぱらめくると、これは読みたいと思い、即買い!かと思いきや、カバーが汚れていたため、その場は断念。結局帰宅後、Amazonでぽちっとな!した本である。

 

本との出会いを長く書いてしまったが、本は出会うべくタイミングで出会うべきうして出会うと思うので、きっと今の自分に必要な考え方を教えてくれる本なんだと思う。

 

帯には「不安」と「寂しさ」が小さくなる考え方の文字がおどる。

たぶん私は、「不安」と「寂しさ」でこの本を手に取った。漠然とした将来への(主に老後への)不安と、独身でいる寂しさ。

 

話のあう友達がいて、楽しめる趣味があって、一生続けたいと思える仕事に出会ってしあわせなのだけれど、やっぱり心の奥底にはこんな感情が存在している。

 

本の構成は以下の通り。

第一章「ふたつのこと」を見つめよう。

第二章「ふたつのこと」を受け入れよう。

第三章「ふたつのこと」をゆるそう。

第四章「ふたつのこと」を愛してあげよう。

 

 

仕事に関する言葉で心に残ったものをいくつか抜粋する。

 

①傍目には「運がいい、要領がいい」と映る人ほど、必死で頑張っていることをまわりに見せないもの。

 

②「私を認めてほしい」という主張は仕事の世界ではタブー。

 

③勤勉に、規則正しい生活をし、目の前にある自分の仕事を片付け、人間関係を育てていくことが「認められない不安と寂しさ」のいちばんのくすり。

 

④健康は直接、命につながっており、体を休める時間を潰して残業をする人は、自分の命を削っているのと同じことです。

 

⑤人生は、階段を一段一段のぼるようなもので、困難を一つ克服すれば、また別の困難がやってきます。永遠に消えることはないし、その繰り返しが成長しながら生きるということです。

 

⑥外見で唯一責任をとらなければならないのは、身だしなみ。清潔さと社会的マナーにそった服装は、大人のたしなみです。

 

仕事がうまくいかなったときの私は、とにかく「認めてほしい」という想いの塊だったなあと今になって、この本を読んで気づく。お客様のことよりも、自分が認められたい、という想いが強すぎて目的も何も見失っていたように思う。それでは本末転倒。自分が社会に対して貢献した対価がお給料だとすれば、もらう資格のない人間であったともいえる。

 

さらに、松浦さんは、お金は預かっているものという見方をし、どんなふうに使えば社会の役に立つのかと考え、大切に使うことを提案する。(たしかに、「預かっている」と考えれば、浪費は減るのかも。)

 

仕事のために休日はしっかり体を休めるけれど、仕事のために命を削らない。

これって大事なことだなあと思った。やりたいことよりも仕事のためにコンディションを整えることは優先する。休日も仕事を第一に考えるのだけれど、健康を害するほど、仕事はしない。

 

これを読んで仕事に向き合う姿勢、働き方を変えようと思った。平日の残業を減らすこと、休日はしっかり体を休める=無理をして出かけないことを実践したい。

 

 

はる

 

 

 

母性(湊かなえ)

母性とは何か。

 

人生におけるすべての判断基準が自身の母親(祖母)に依存している母親=「私」。

その母親に愛されたいと願う娘(孫)=「わたし」。

 

この物語は「私」と「わたし」の回顧で話が進んでいく。

どちらもそれぞれの主観で書かれているため、読み進めていくと驚くほどに裏切られる。両者が全く反対のことを書いてあったりするから油断できない。

 

とことんすれ違う母と娘の想い。

台風の惨劇とこのすれ違いが悲劇を生むのだが・・・

 

ただのミステリーで終わらないのが湊かなえ作品。

最後に、作家が母性とは何かをこたえる。

 

「時は流れる。流れるからこそ、母への思いも変化する。それでも愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか。」(p.349)

 

母性ってなんだろう。

 

はる