読書の旅

私にとって「読書」とは何かを考えます。

にじいろガーデン(小川糸)

小川糸さんの小説は読みやすくて好きだ。

 

話のテンポがはやくて、読み進めやすい。流れるように言葉が紡がれていくなかで、大切なことは、心のそばにそっと置いていく感じがするから好きだ。「そっと置く」という表現が相応しいと、私は思う。決して押しつけがましいことはないから、小川さんの小説は心地よい。

 

***この記事は、ネタバレも含みます****

 

にじいろガーデンは、プロローグと四章からなり、4人の主な登場人物の視点によって構成されている。第一章は泉、第二章は千代子、第三章は草介、第四章は宝の視点だ。

 

物語は、泉が女子高生の千代子の飛び込み自殺を止めたことからはじまる。やがて二人は駆け落ちをし、家族となる。母二人、子二人。泉と千代子はレズビアンのカップルで、草介はそれぞれ泉と前夫の子であり、宝は千代子が駆け落ち前にやけくそになって宿してしまった子である。駆け落ちした二人は、マチュピチュ村でゲストハウス虹を経営しながら、家族として暮らしていくのだがー・・・

 

最後には、血のつながっていない二人が残される。

 

家族とは何だろう。血のつながりなんか関係ないんじゃないか、そんなことを小川さんは問題提起したかったのかもしれない。それくらい用意周到に物語は仕掛けられていた。男女の結婚は祝福されるのに、女性同士は祝福されない、お互いに好きなのに二人の子は持てない。人を想う気持ちは同じなのに、フェアじゃない世の中を懸命に生きる泉と千代子の姿に心打たれる。気づくと、涙が出ているシーンがたくさんあった。

 

 

レインボーフラッグやにじいろ・・・

宝が「ふたりは、また生まれ変わっても、レズビアンがいいの?」ときいた。

泉の答えの中で、「少なくとも私やおチョコちゃんに与えられた使命って考えると、それはね、たぶん、いたわることだと思うの。うちらは、世の中のはじっこで生きているから、そういう少数派の人たちの気持ちが理解できる。だからその分、優しくなれるの。いろんな弱い立場の人の気持ちが、わかるから。」(p293)

 

「そうね。あと、世の中にいろどりを与える存在ってことも、言えるかも。」と千代子が加える。「世界がすべて同じ一色の色だったら、つまらないじゃない。でも。どんなに数が少なくても、ちょっとそこに色彩があるだけで、世界がグッときれいに見えるでしょう?それと一緒よ。」

 

役割というと重いし、ちょっと違うかもしれないけれど、人はみな自分の運命を懸命に生きていて、その中で答えを出そうとする生き物なんだなあと思う。レズビアンとして生きる二人が自分の生まれた役割を見つけようとすると疲れてしまうけれど、二人が自分らしくありのままで生きることで、ようやく「いたわること」「いろどり」という答えを見つけたのだと思った。世間的にみて「普通」じゃない世界を生きることは、どこか肩身が狭くて自分は劣っている人間だと思ってしまうけれど、「いろどり」を添える存在だと思えたら、少しは肩の荷が軽くなるのかもしれない。「ありのまま」生きることって難しいんだなあ。

 

 

いろんな人がいる。自分の狭い視野や世間の「普通」の物差しで判断してしまいそうになる。でも、正解なんてわからないし、「そのままのきみでいいんだよ。」といえる存在でありたい。

 

 

 

はる