読書の旅

私にとって「読書」とは何かを考えます。

小説

にじいろガーデン(小川糸)

小川糸さんの小説は読みやすくて好きだ。 話のテンポがはやくて、読み進めやすい。流れるように言葉が紡がれていくなかで、大切なことは、心のそばにそっと置いていく感じがするから好きだ。「そっと置く」という表現が相応しいと、私は思う。決して押しつけ…

母性(湊かなえ)

母性とは何か。 人生におけるすべての判断基準が自身の母親(祖母)に依存している母親=「私」。 その母親に愛されたいと願う娘(孫)=「わたし」。 この物語は「私」と「わたし」の回顧で話が進んでいく。 どちらもそれぞれの主観で書かれているため、読…

こうばしい日々(江國香織)

大人になってから出会ったけど、中学生の時に出会ってみたかった本。 舞台はアメリカ。江國さんご自身のアメリカ留学の経験が活かされているのかなあと感じた。アメリカのスクールドラマで見るようなの学園ライフのリアルな空気が作中に漂う。 アメリカ育ち…

錦繡(宮本輝)

美しい。とにかく言葉が美しい。 書簡体で綴られたこの小説の最大の魅力は、日本語の美しさであると思う。 こんなにも美しい日本語がこの世に存在したのかというほど、感嘆した。 一組の男女の往復書簡であるから、漢語体で書かれたような堅苦しさがない。 …

ぼくの小鳥ちゃん(江國香織)

冬の朝、ホットコーヒーを飲みながら窓辺で読みたい本。主な登場人物は、ぼく、小鳥ちゃん、ぼくの彼女である。 ある雪の朝、ぼくの部屋に小鳥ちゃんがやってきた。 この小鳥ちゃん、ラム酒のかかったアイスクリームが好きだっていうから只者じゃない。 しか…

手のひらの京(綿矢りさ)

ーなんて小さな都だろう。まるで川に浮いていたのを手のひらでそっと掬い上げたかのような、低い山々に囲まれた私の京。(p.147) 綿矢りさ『手のひらの京』 おっとりした長女・綾香。 恋愛に生きる次女・羽依。 自ら人生を切り拓く三女・凜。 物語は、東京で…

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)

ボブ・ディラン氏のノーベル文学賞のニュースを聞いて、私は、真っ先に村上春樹氏の『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』の一説が思い浮かんだ。 「私は目を閉じて、その深い眠りに身をまかせた。ボブ・ディランは『激しい雨』を唄いつづけていた。…

湊かなえさん講演会

東京国際ブックフェアに足を運んだ理由の一つに好きな作家さんの講演会の開催がありました。 人気ミステリー作家の湊かなえさん。 【大ベストセラー『告白』はこうして生まれた!】 登壇者:湊かなえ氏、双葉社の営業局長・川庄篤史氏、同文芸出版部副編集長…

ツバキ文具店(小川糸)

「鎌倉の一年は夏から始まると、私はひそかに思うのだ。」 この小説は夏から始まる。 舞台は鎌倉。鎌倉の夏秋冬春とともに、物語は進んでいく。 主人公は、鎌倉で一人、ツバキ文具店兼代書屋を営む雨宮鳩子。 通称ポッポちゃんである。 ◆代書屋。 この小説を…

望郷(湊かなえ)

湊かなえさんの短編集。 読後、まず抱いた感想は・・・ 「ミステリーなのに、ミステリーらしくない。」 でした。 物語の舞台となっている白綱島は、湊さんの故郷因島であることはすぐに想像がつきました。白綱島を舞台に、「本土」と島をつなぐ「白い橋」が…