読書の旅

私にとって「読書」とは何かを考えます。

ツバキ文具店(小川糸)

「鎌倉の一年は夏から始まると、私はひそかに思うのだ。」

この小説は夏から始まる。

舞台は鎌倉。鎌倉の夏秋冬春とともに、物語は進んでいく。

 

主人公は、鎌倉で一人、ツバキ文具店兼代書屋を営む雨宮鳩子。

通称ポッポちゃんである。

 

 

◆代書屋。

 

この小説を読むまで、その存在を知らなかった。

 

代書屋とは、簡単にいってしまえば、依頼人の代わりに手紙を書く仕事である。

今の時代では、祝儀袋に名前を書くなど文字を書くのが主な業務内容とされているようだが、ツバキ文具店にやってくる代書依頼のお客様は、一癖も二癖もある人物ばかりで、鳩子はその人たちに頼まれたワケアリの手紙を書いていく。

 

 

◆先代

物語の核となるのは、鳩子が「先代」とよぶ、祖母との関係である。

鳩子に代書屋を継がせるため、厳しく育てた「先代」。

高校生になり、その「先代」に反発して、「先代」の最期を見送ることもなかった鳩子。

鳩子は自分の元に舞い込む依頼人の手紙を書きながら、また、その人物との出会いを通して、頑なだった「先代」への思いが少しずつ変化をしていく。

 

 

◆文房具

ツバキ文具店。その名のとおり、文房具を専門に扱うお店である。

ゆえに、鳩子が代書で使う筆記具や紙にもこだわりがある。

文房具好きにはたまらない叙述もたくさんあるのではいだろうか。

「男爵の雰囲気には毛筆よりも太めの万年筆の方が合っていると判断し、今回はモンブランの万年筆を選んだ。インクは、漆黒。紙は、つい先日押し入れから出土したばかりの「満寿屋」の原稿用紙を使う。」

というように、依頼人によって、筆記具も変わる。

次のページには、実際にその筆記具で書かれた手紙が載っている。

手紙好きにもこの本はわくわくするページがあるのである。

 

 

◆個性豊かな登場人物

ポッポちゃん以外の登場人物も個性豊かだ。

ツバキ文具店のお隣に住むバーバラ夫人。

お客さんには、マダムカルピス、孫のこけしちゃん、小学校の教師をしているパンティー・・・など。

私は読んでいて、マダムカルピスの語感が面白くて、笑ってしまった。

マダムカルピス、まだむかるぴす、何度も言いたくなる語感である。

 

 

最後に、、、

この本は友達と鎌倉旅行に行った翌週に、本屋で偶然見つけて手に取りました。

装丁も含めて、美しい本です。

私は、物語が「春」で終わることと、最後の手紙に涙が止まりませんでした。

 

 

はる

世界の美しい図書館

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昨日紹介した松浦弥太郎さんの『もし僕がいま25歳なら、こんな50のやりたいことがある。』の中で、
松浦さんが実際に20代の頃、実践していたという「なんでもベスト10」というリストづくりの話が載っていました。

テーマはいろいろと思い浮かぶのですが、10というのが意外に難しい。
あまり興味のないものは10個も思い浮かばないし、逆に好きなものは10個に絞り切れないのです(笑)

自分の価値観を知るためにも、今日から少しずつ思いつくもので挑戦してみようと思います。
ランキングをつけようとすると、どれを何位にしようかと悩みます。
私は優柔不断なので、ランキング付けの習慣で、決断力?を鍛えてみるのもいいかも、なんて思いました。

「行ってみたい世界の図書館ベスト10」
参考にさせていただくのは、『世界の美しい図書館』という本です。
世界中の素敵な図書館が100館も紹介されています。
ここから10個選ぶなんて・・・難しい。

メルク修道院図書館(オーストリア1735)
・・・ドナウ川を見下ろす地に建つ世界遺産

2マルチアーナ図書館(イタリアヴェネツィア1564)
・・・ルネッサンス

3王立ポルトガル文学館(ブラジルリオデジャネイロ1888)
・・・幻想図書館

アイオワ州図書館(アメリカ1886)
・・・4階建ての書架をつなぐ螺旋の芸術

シャンティイ図書館(フランス1870)
・・・森の中にたたずむ優美な城に隠された秘宝

大阪府中之島図書館(日本1904)
・・・ギリシャ神殿を思わせる明治時代の名建築

シュトゥットガルト市立中央図書館(ドイツ2011)
・・・貨物駅者の跡地に建つ白亜の直方体

フィンランド国立図書館フィンランドヘルシンキ1840)
・・・新古典主義

9ザンクト・フロリアン修道院図書館(オーストリア)
・・・最古のフレスコ画がきらめくバロック図書

10ヴェンラ図書館(ノルウェー2011)
・・・建物と書棚が融合した有機的な木造図書

いいなと思ったものを直感で挙げてみました。
近未来的な図書館よりも近代にできた歴史ある図書館を好む傾向にあるのかも。

肩の力を抜いて、脳みそのリフレッシュのような気持ちで「なんでもベスト10」を続けていきたいです。


はる

もし僕がいま25歳なら、こんな50のやりたいことがある。(松浦弥太郎)

松浦弥太郎さんの著書です。

松浦さんと言えば、『暮らしの手帳』の編集長をされていた方で、2015年にはクックパッドに入社されています。高校をドロップアウトし、渡米した話はいろいろな著作で書かれています。

 

松浦さんの本はこれまでも、「今日もていねいに。」「即答力」「考え方のコツ」などを読んだことがありました。

 

生き方に悩んだとき、松浦さんの本からヒントをいただいています。

 

25歳。仕事も恋愛もこれからの人生も悩むことが多いです。

一番大きな悩みは仕事でしょうか。そんなときこの本に出会いました。

 

まえがき

「25歳といえば、まだまだ社会人ビギナー。いや、僕はルーキーという言葉のほうが好きです。将来が不安といわれ、夢のない時代だといわれ、仕事でもプライベートでも、悩んだり迷ったりしていることが多いでしょう。」

 

(まさに!と前書きの時点で、大きくうなずく私)

 

この本は、松浦さんが25歳のときにしていたことではなく、松浦さんが25歳のルーキーと同じ目線に立って、やってみたい50のことが書かれています。

 

50のうちのある項目にこんな言葉がありました。

「あなたが会社にいない時間も含めて、あなたという人間」にお給料を払っているのです。だからプライベートな時間に自分を磨くことも、健康管理もまた仕事なのです。

・・・肝に銘じます!

 

これは実践しているかも?ということに、「自分がなにが好きで、なにに感動したのかをメモしたり、記録しておく」がありました。

 

学生時代、月に一度以上美術館の展覧会へ足を運ぶようにしていました。

最初のころは、万遍なく見ることに必死で、振り返ってみると、どんな作品が自分の琴線に触れたのか分からないこともしばしば。

ここ数年はその反省を生かし、「部屋に飾るんだったらどの作品かな?」とMYBESTを選ぶことを意識してみるようにしています。

時間がないときは、出展一覧の紙の、気に入った作品の題名に印をつけるだけでもいいと思っています。こうすることで、自分の好みを知り、選ぶことに訓練にもなっているような気がします。記録としても残るのも良い点です。

 

当たり前だと思っていることの中にもたくさんのヒントがありました。

当たり前だからこそ、気がついていないこともあり、目から鱗でした。

50のことが気になる方は、ぜひ読んでみてください。

 

はる

 

 

 

読書体験(小学校低学年)

一週間ぶりの更新です。

今日は、読書体験を振り返る②小学校低学年編です。

読書興味の発達は、前回とほぼ同じ昔話寓話逸話期にあたります。

 

小学生になると読書月間が6月と11月にあり、読書カードが配られました。

1年生の目標はひと月に10冊(6月)、20冊(11月)でした。

1冊読むとごほうびシールを一枚もらうことができ、10冊読むと大きなごほうびシールがもらえました。

 

読書カードを見返すと、6月は110冊、11月は140冊読んでいたらしい。

そのなかで今もあらすじが思い出せる印象に残っている本を挙げてみます。

 

・たねのふしぎどうして

・さっちゃんのまほうのて

・きつねのでんわぼっくす 

・サンタクロースっているんでしょうか?

・せんたくかあちゃん

 

図書館で借りた本をたくさん読みましたがあらすじが思い出せないもの多く、手元にあるものは何度も読んだからか印象に残っているものが多いです。

 

ほかにも、学校の図書館では、かいぞくポケットや忍たま、王さまレストランなどのシリーズものもよく読んでいた記憶があります。

 

2年生になると、月間の目標がページ数になりました。

800~1000ページくらい読んでいたようです。

 

・日本むかしばなしシリーズ

・わかったさんのプリン・・・わかったさんシリーズ

・こまったさんのグラタン・・・こまったさんシリーズ

・ゆうきだよねパンダうさぎ

 

このころが人生で一番冊数を読んでいたかもしれません(笑)

MY多読期?とでも呼びましょうか。

絵本の面白さを再発見している日々なので、大人になった今、読書カードに書かれていた本たちをもう一度読みたいなとも思います。

 

はる

 

望郷(湊かなえ)

湊かなえさんの短編集。

読後、まず抱いた感想は・・・

「ミステリーなのに、ミステリーらしくない。」

でした。

 

物語の舞台となっている白綱島は、湊さんの故郷因島であることはすぐに想像がつきました。白綱島を舞台に、「本土」と島をつなぐ「白い橋」ができたことで、複雑な想いを抱く登場人物たちが描かれます。

 

過去のトラウマを持つ登場人物たちが、成人して(または親になって)からの視点で、過去を語り、今を生きます。

 

普通に読み進めていくと、故郷を懐古する小説のようにもみえますが・・・

 

「みかんの花」

島を出て行った姉に隠された秘密。

ラストは、背筋が凍るこわさがありました。

 

「海の星」

僕=浜崎洋平と「おっさん」の娘=真野美咲が出会う因果の恐ろしさ。

「おっさん」が僕の家にボランティアに来ていた理由に驚愕しました。

 

「夢の国」

東京ドリームランドに憧れていた田山夢都子。

厳しい祖母の存在により、子どものころ行くことは叶いませんでした。

親になり、憧れ続けたドリームランドへ行きますが、そこで夢都子は自分が憧れていたものは何であったのかに気づかされます。自分を縛っていたものは・・・

 

「雲の糸」

母親が父親を殺したことで、犯罪者の息子として不遇の少年時代を過ごした宏高は、歌手として成功。同級生・的場の策略により、的場鉄工所の五十周年記念のイベントで歌を歌うことに。屈辱に耐えかねて投身するも、目が覚めたベットの上で、母親が父親を殺した理由を知り・・・

 

「石の十字架」

台風で家が浸水し救助を待ちながら、わたしは石鹸に十字架を彫り、学校に行けなくなった娘・志穂に子どものころの話をします。面と向かって言えないことを、親友めぐみとのエピソードに重ねて訴えるように・・・

「言葉は知らないうちにナイフになる、ってことはわかっているのに、どの言葉がナイフになって、どの言葉がならないか、区別することはできなかったから。これは大人になった今でもできない」(230ページ)と、わたしは娘に伝えます。

わたしはめぐみに放った言葉を十字架として背負いながらも、娘に当時の話を伝えていると窓の外からライトの光が・・・

 

「光の航路」

小学校教師の大崎は、女子のいじめ問題に悩まされていました。大崎の家が放火され、入院していたところに、同じく教師であった父親に中学時代助けられたという畑野忠彦がやってきます。そこで聞いた父の言葉は、ある一筋の光をもたらし・・・

 

 

全編を通して、「学校」や「教師」が出てくるのも特徴であると感じます。

湊さんが実際に家庭科の講師をされていたからでしょうか。

「海の星」では、おっさんの娘は小学校の教師という設定ですし、「夢の国」では、夢都子と夫の平川は高校の教育実習で出会っています。「光の航路」でも、大崎航もその父も小学校の教師です。

だれもが通過する「学校」を物語に絡ませることは、島に住んだことのない読者にも島の生活をよりリアルに伝えることに成功しているようにも思います。

 

表面的に登場人物がそれぞれの話がつながっているわけではありませんが、物語の奥底のテーマでは深くつながっているように感じました。それは、白綱島を舞台にして描かれた作品であると同時に、登場人物が心のどこかで島という狭い世界の閉鎖性に悩んでいたことに起因するのかもしれません。

 

様々な伏線が散りばめられているのでしょうが、その場面にきって「はっ!」となることも多数。読後に、もう一度読んでたしかめたくなる、そんな作品です。

 

はる

代表的日本人

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2018年の大河ドラマ堤真一さんが「西郷隆盛」を演じると聞き、ある本を思い出した。


内村鑑三著 鈴木範久訳『代表的日本人』

(元来語り出すと文章が長くなる性質なので、項目を立てて紹介していこう)


・【英文での出版】
内村は日本人であるのに、訳者がいることに首を傾げる方もいらっしゃるのではないだろうか。
実はこの本は、英文で原書が発刊された。
1894年に「Japan and the Japanese」が出版され、1908年に「Representative Men of Japan」で改版がなされる。


・【西郷隆盛と『代表的日本人』】
この本は内村鑑三が、代表的な日本人五人を本の中で描き出した。
その五人のうち最初に書かれているのが西郷隆盛である。
西郷以外に内村によって描かれたのは、上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮上人だ。


・【100分de名著×若松英輔
『代表的日本人』は、NHKで放送中の100deで名著で1月に紹介された本でもある。
若松英輔氏のテキストを参照しながら、この本を紹介したい。
テキストを読むことで、こういった読み方ができるのか!と私のような想像力に乏しい人間には目から鱗であった。
ぜひ一緒に読むことをおすすめしたい。(※決して回し者ではない)


・【二つの戦争】
若松氏は、テキストのなかで、この本の発刊した時期に注目している。
日清戦争日露戦争。二つの戦争を経験しナショナリズムが高揚する中、英文で出版されたという背景を抜きにして、この本と向き合うことはできない。


・【鍵を握る言葉―天】
この本の文章の主格は、人間を超えた力の主体である天=hevenである。
西郷が主格でなく、あくまでも天が主格。
若松氏によれば、人間が何かをするのではなく、人間は無私になって天の道具になるのがもっとも美しいという内村の世界観が表れた構造なのだとか。


・【待つ】
この本の中で、私が最も印象に残った西郷に関する一文を紹介したい。
「西郷は人の平穏な暮らしを、決してかき乱そうとはしませんでした。ひとの家を訪問することはよくありましたが、中の方へ声をかけようとはせず、その入り口に立ったままで、だれが偶然出て来て、自分を見つけてくれるまで待っているのでした!」  (内村、39ページ)
内村はこの文に傍点を文末には感嘆符をつけることで、一文をことさら強調している。内村の描く西郷像の象徴ともいえる一文だ。
私にとっては、まったく新しい西郷像であった。
若松氏は、必ずしも内村のように西郷を読む必要はないとテキストで述べているように、これはあくまでも内村の考える西郷に過ぎないが、私には驚きであった。
この一文を読むと、スピードが求められる現代において、「待つ」ことの重要性を感じるとともに、
「待つ」ことは大変忍耐のいる行為であるが、「待つ」ことのできる人間になりたいと感じる。


・【良書と読者】
若松氏は、テキストの中でこんな素敵な言葉を述べておられる。
「良書は、読まれることによっていっそう豊かになっていきます。それは読者とともに育ち、読者によって完成されるものです。」
こうも述べている。
「五人すべてに感心持てなくてもよいのです。」
私自身、まだ西郷隆盛しか読んでいない。
いつか年を重ねて読みたくなったら、他の四人も読みたいと思っている。



はる

絵本

先日、書店の絵本コーナーに立ち寄ると、衝撃的なタイトルの絵本に出会った。

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『ママのスマホになりたい』

 

 

個人的にはキミスイこと『君の膵臓をたべたい』以来のインパクトのある題名だ。

 

スマホに夢中なママに振り向いてほしいぼく。

 

子ども向けというよりも、完全に世の中のママたちへ向けたメッセージである。

 

絵本は、子どもの読みものと思われがちだが、実は大人へ向けたメッセージが込められたものも多いと感じる。

 

大人でもちょっと答えに困ってしまうような真理を説く絵本もあれば、哲学的なテーマの絵本もある。

 

大人こそ絵本を読むべきではないかと思っている。

 

絵本は奥深い。

私の知りえない良質な絵本が世の中にはたくさんあるだろう。

一人の大人として、多くの絵本から学んでいきたいと思っている。

 

はる

(今日は常体で書いてみました~)